近年では、その土地にある素材を生かす作品を発表している。
それは、記憶を掘り起こし、物語を紡ぎだすものである。
土地が育んだ自然・伝統・芸術・人々等に着目している。
さらにそこにある新しい価値観を
同じ土壌で育った素材へ投影しながら、見つけて行く。
場からインスピレーションを感じ取り素材から
根源的な何かを引き出すことが私の表現手段である。
そのような表現手段を通じて、
自然に生かされている生命の尊厳を深く考えて行きたい。
2017年の正月。
誰もいない静かな山の中でこれまでの作品を燃やしたことから、
火の造形は始まった。
さっきまで形あったものが、ただの木片となり炎をあげて形を変えていく。
パチパチと音を立てる炎を眺めていると、
ふとスウェディッシュストーブのことが頭に浮かんだ。
檜や杉の生木は、樹の中心に油を含み、内側から燃えていく。
森で働く職人は、その性質を利用している。
この自然からもたらされる現象を造形の手法を取り入れて
「刀耕火種~森のたねのゆくえ~」となった。
古から森に暮らした人間は、自然の循環の中で命を繋いできた。
生命は、必ず死にゆき次世代に命を繋げる営みを繰り返えす。
人間を含め地球上のあらゆる命は循環している。
その一端を見つめ考え続けることが
作品へ向かうモチベーションとなっている。